薬物依存症回復支援 — 薬物依存症は回復できる病です

サンフランシスコツアー報告 ’03


三月十四日に関空を出発、サンフランシスコへ向かった。

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米国のイラク攻撃が始まりそうな中で、本当にツアーが予定通り実施できるのだろうか、という不安を持ちながらの出発だった。ツアーの参加者は全部で八名。五年前の第一回サンフランシスコツアーが二三名の大所帯であったことからすれば、ずいぶんと小さな小回りのきく人数になった。

今回、久しぶりにツアーを企画したのには理由がある。五年前のツアーで、私たちはドラッグコートをはじめて見て衝撃を受けた。違法ドラッグの使用や所持、ドラッグ絡みの窃盗などで逮捕された薬物依存症者が、希望すれば通常の司法手続きから離脱し刑事罰ではなくトリートメントを受けられる、それがドラッグコートだった。以来、薬物依存症者には刑事罰しか用意されていない日本で、なんとか回復の希望が持てるシステムをつくりたい、そう考え続けて来た。そしてフリーダムが大阪ダルクと共に昨年着手したのが、「拘置所へのインタベンション・プログラム」だった。

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    • 拘置所にいる、薬物事件の被告にダルクの仲間がメッセージを運ぶ、このプログラムはもちろん、現行のシステムそのものを変えるものではない。しかし司法の領域の中にまったく異質なアプローチが持ち込まれることに意味があり、強い影響力があると言える。事実、このプログラムを始めてから弁護士経由の相談が増え、中には検事からの紹介というケースも出てきた。司法領域で薬物関連問題を犯罪として捉え関わってきた人たちに、これまでとは違うアプローチがある、という問題提起は着実に浸透しはじめた。
      そこでこの次の段階での取り組みとして、私たちは米ドラッグコートから司法関係者を呼び日本でシンポジウムを開催しようと考えた。ドラッグコートから関係者を招請するためには交渉に現地に行かねばならない。でも交渉だけではもったいない、久しぶりにツアーを組んでしまおう、というのが今回のツアーの発端だった。
      いささか不純な動機で企画したツアーだったが、サンフランシスコの友人たちの尽力できわめて充実した内容となった。コーディネーターとして奔走してくださったのは、本ニュースに連載をお願いしている西澤奈穂子さん。西澤さんは、臨床心理学の博士課程で学ぶ留学生である。西澤さんとともにベイエリアで学び、もしくは働いている日本人たちにも今回のツアーには案内や通訳として関わっていただき、お礼の言葉がないほどお世話になった。

      ツアーの内容は大きく分けると次のようになる。一つはドラッグコート関係。成人ドラッグコート、少年ドラッグコートに各一日ずつをあてた。特に少年コートは今回がはじめての訪問である。次に入寮施設を見学した。サルベージアーミー(救世軍)やクリサリス、アースなどである。またトリートメント・システムを学ぶために、ホンマ・レイコ先生やヘイトアシュベリーのイナバ先生、パブロ・スチュワート先生らから講義を受けた。今号のニュースには、ツアーに同行したお二人からドラッグコートを中心とした報告が寄せられている。そこで私はトリートメント・システムについての報告を書いて見たい。(なおドラッグコートについては次号に詳しい報告と分析を予定しています。)

      米国における薬物・アルコール依存のトリートメント

      米国では銃と並んで薬物が大きな社会問題だ。ピークの一九七九年には、薬物乱用者は二千五百万人、全人口の十四%にも達したという。そのころに比べれば減少したとはいえ、今でも乱用人口は多く、約千四百万人(人口の6%)である。ドラッグは米社会に広く浸透しており、高校生の半数が在学中にドラッグ使用を経験する。私たちが訪問したサンフランシスコ市は、人口が七七万人であるが、年間延べ二万人の市民が、アルコール・薬物に関連したなんらかのトリートメント・サービスを受けているというから、依存症が少なくない市民の健康を蝕んでいることが分かる。

      米国の薬物依存のトリートメントはここ二〇~三〇年の間に整備されてきた。それ以前はAAやNAなどのセルフヘルプグループが主体で、精神医療は依存症に対しては拒否的であったと言うから、ちょうど今の日本と同じである。一九七七年に「地域精神保健センター法」でアルコール・ドラッグの治療が、地域のセンターの必須サービスに義務付けられた頃から変化が始まったようだ。
      現在の米国のドラッグ・トリートメント・サービスの特色を次のように言い表すことができる。

      ①日本と違い、皆保険制度ではないためか、医療によるサービスのしめる割合が小さく、非医療施設での入寮や外来トリートメントが主体である。医療施設での入院は、アルコールなどダウナー系の解毒がほとんどで期間は約一週間。それ以上、長期の入院は重篤な精神障害を合併している場合などに限られる。もちろん富裕層は高額な入院費のかかる「専門病院」で一ヶ月程度の治療を受ける。
      ②トリートメントを提供する主体は、NPOである。その数は多く、それぞれの団体が独自のミッションを有しており、サービスの内容も多彩である。資金面でも、ほとんどを公的な補助金に頼っているところもあれば、公的資金は一ドルもうけつけないという団体もある。③ドラッグコートをはじめ、刑事司法システムとトリートメントがかなり密接に連携している。

      今回のツアーで訪問した施設のひとつを紹介しておこう。

      サルベーション・アーミー(救世軍)

      サルベーション・アーミーはアメリカではリサイクル・ボランティア団体として知られている。家具・電化製品・衣類など、再利用ができそうな不用品の多くはサルベーション・アーミーに寄付される。私たちが訪れたオークランドのサルベーション・アーミーの施設は、リサイクル工場に併設され、リサイクルの収益のみで運営されていた。
      定員一三〇人のこの施設は男性専用で、プログラムの期間は九ヶ月から一年。刑務所で刑期を残している人が治療施設で過ごすことを望み、裁判所命令を受けてこの施設に入寮することが多い、という。カリフォルニア州では、トリートメント・プログラムを受けることで刑期が短縮されるため、希望者は多い。刑務所経由以外には、ホームレスとなってしまった人たちが利用している。
      入寮して九ヶ月は施設内でリサイクルの仕事に従事し、その後三ヶ月で就職先をさがす。日中は労働が重視され、夜間に教育プログラムやリラプス予防の教室がある。高卒の資格がとれるカリキュラムを受けることもできる。
      入寮中にドラッグを使用すると、この施設から退去となり、三〇日間は再入所できない。このため退去者はシェルターなどですごすか、他の施設を探すことになる。プログラム途中にいなくなる人も多くおり、一年のプログラムを無事に終えるのは二割程度である。

      今回のツアーではこのほかにも多くの施設やクリニックを訪れた。それらについてもおいおい報告する機会をもてればと思う。
      ツアーの最大の目的であったドラッグコート関係者の招請については、アラメダ郡のドラッグコートの判事、ペギー・ホラさんにお会いして、来日講演を引き受けていただいた。ホラさんはカリフォルニア州でもドラッグコートの経験の長い著名な判事である。ホラさんの来日は10月末になる予定で受入れ準備か始まっている。
      なおツアーでヘイトアシュベリー・フリー・クリニックのパブロ・スチュワート医師に再会することができた。パブロ先生は来春、ご家族とともに観光のため来日される予定であるが、この折に講演会を開きましょうとの約束をいただいた。前回の来日時は三回の講演で、謝礼は「阪神・巨人戦」へのご招待であったが、今回も何か素敵な謝礼を用意せねばと考えている。ツアーから、新たなつながりや企画がうまれ、フリーダムの活動の力になっていくことが実感できたのも今回の大きな収穫であった、と思う。

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