薬物依存症回復支援 — 薬物依存症は回復できる病です

フリーダムセミナー13「累犯障害者と累犯薬物依存者」


平成19年度大阪府委託事業 フリーダムセミナー13
「累犯障害者と累犯薬物依存者」 盛会のうちに終了!!

※ 今,司法と福祉の現場に何が起きているのか

fp19

本来,知的障害をはじめとする様々なハンディを抱えた方や,重症の薬物依存症者については,医療的あるいは福祉的なサポートこそが必要である。しかし,現実には,福祉や医療のネットには脆弱な部分も多く,そこから零れ落ちてしまった方が,最終的に司法のネットでフォローされている現実がある。ハンディのある方もない方も共に生きる社会を目指す「ソーシャルインクルージョン」(社会的包摂)の思想が福祉の分野に取り入れられようとしているが,罪を犯した障害者や薬物依存症と生きづらさを抱えた方に対する社会の眼差しは依然として厳しい。今,司法と福祉の現場に何が起きているのか明らかにし,司法と福祉のよりよい連携はなしうるのか。このシンポジウムはこうした観点から企画された。

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    • ※ 当事者の声に耳を傾けることの重要性

      企画に当たって一番重視したのが,当事者の声に耳を傾けるということであった。当事者の「語り」のなかには,援助専門職等当事者ではない者が見落としてきた多くの回復への希望が散りばめられていることを,我々はダルクやフリーダムの活動のなかで常に学んできた。そこで今般,自らの受刑経験を契機に,司法と福祉との連携について活発な発信を続けておられる山本譲司氏,薬物依存症からの回復施設ダルクを日本で最初に立ち上げ,現在も社会内,そして刑務所内の依存症者の回復に奔走されておられる日本ダルク本部代表近藤恒夫氏,そして4度目の受刑生活で回復への端緒を掴み,フリーダムボランティアスタッフを経て京都ダルク運営に携わっている阪本高司氏にシンポジストをお願いすることにした。

      ※ 幅広い分野から集まった参加者

      幸いにして新聞等で多く取り上げられ,当日は遠方は福井や徳島県から合計236名の参加があった。当事者や家族のほか,医療,行政,更生保護官署職員や保護司,矯正施設職員,司法関係者,教育関係者,作業所やNPO等の福祉スタッフなど,これまでのセミナーに比べかなり幅広い分野からの参加があったことも今回の特徴である。フリーダムセミナーに初めて足を運んで下さった方も少なくなく,薬物依存症への回復支援に対する理解の裾野の広がりが期待できた。

      ※ 地に足のついた議論と前向きな提言

      山本氏は,ご自身の経験を元に,福祉のネットから零れ落ちた多くの障害者が刑事施設に収容されている現実を,黒羽刑務所養護工場のVTRの紹介も交えて,具体的に説明された。刑事施設内のハード(設備)ソフト(処遇)面双方での充実は無論のこと,釈放後の生活をいかにして支えるかという観点から,矯正と更生保護との連携の重要性について強調された。受刑者の処遇には1人当たり年間300万円の税金が必要とされており,この税金をもっと有効に使う方法があるのではないかと言及された。
      近藤氏は,ダルクに繋がる者の多くは,帰住予定地や引受人が整っている仮釈放者ではなく,頼りになる人も行き場も喪った満期釈放者である現実に言及され,回復を支える生活基盤の整備の重要性について強調された。「弱い人は神様からたくさんの支援を受けるように定められている。」という主張には,累犯薬物依存者を「薬物をやめる意思がない者」と排除する人々への,穏やかだが確固たる反論として,会場の共感を呼んだ。
      阪本氏は,4回目の受刑の際,自ら独居を希望し,それまで十分につながりきれなかったダルクにしっかりと繋がった端緒について,飾らない言葉で語られた。

      ※ 高まる共感 アンケート集計結果より

      今回のセミナーの特徴は,アンケートの回収率が非常に高く,多彩な意見が記載されていたことである。その一部をここに紹介する。

      ★山本譲司さんの「獄窓記」を読んで,お話をきいてみたいと思い参加しました。私自身の関心は障害者でしたが,犯罪を繰り返すことを社会がどう考えていくべきなのか,非常に勉強になりました。犯罪被害者の人権が新たな人権として光があてられるようになった様に,累犯者を社会がどう受け入れていくかを考えていくことも犯罪のない社会を築くことにつながると思いました。ありがとうございました。
      (中学社会科教諭)

      ★今日は有難うございました。今日の色々なお話をうかがってふだんのことに重ね,問題の二重構造をつくづく感じました。というのは,当人の抱える問題(生育歴,受刑歴,社会不適応,etc)+社会側の中途半端な対応,無理解であり,この後者が特に重いと感じています。また私自身はふだんホームレス状態の方々の対応をしていますが,その若年化,メンタル的問題を抱える人の増加,生きづらさを抱える人々が増えているのを感じており,生保,医療のみでは対応しきれてないと実感しています。プラスそういった人が,いわゆる野宿スキル(野宿でも生きていけるという体験)をしてしまうと,社会生活の中で,ストレスを感じると再野宿になるケースが多いので,まず刑務所や家庭,病院であっても,実際ホームレス状態の人は多いと思うので,その段階で支援につながることを望み,そういうことに携われるスタッフになりたいと思いました。
      (野宿生活者巡回相談室スタッフ)

      ★薬物に関する依存者の心理,障害者の依存制について国がもっと力を入れ出所後のケア・矯正に対して社会問題として行政が取り組まれる事が大多だと言う事がわかりました。
      (薬物乱用防止教育関係者)

      ★数年前の池田小学校で多くの児童を殺傷した事件があり,勿論犯人は許せない。でも彼の父親が取材を受けた時の態度や社会に溶け込めず孤立し,孤独の中で絶望していた状態が窺え,誰か一人でも彼に寄り添っていたら,ここ迄の事件にならなかったと思いました。私は民生委員でしたがそんな場合どんな力になれるかと思うと何も出来ないと思い知りました。本当に塀の外で「自由」を満喫している私達の問題だと思います。
      (その他行政関係者,元・民生委員)

      ★当事者の方の意見を聞けた事によって,こちらが良いと思っている事も当事者の方にとっては,一方的なモノなのだと思いました。有難うございました。
      (学生)

      ★私自身は,10年近く売春を仕事としてきて,ひとつは売春をする女性や外国人のためによる,自助グループの可能性について活動もしていました。一方で,売春の客としてム所帰りの人,薬物を使う人,障害のある人,またいわゆる日雇い労働者などの男性と多く出会ってきました。彼らの中には,私たちに対して「社会の底ヘン」としての共感や,私たちに対する感謝を持つ人が少なからず居て,私たちを大切に扱ってくれました。このことはとても複雑なことだと思いますが,そのような経験から,今回のセミナーに関心を持ちました。今,感じていることは,女性も大変だが,男性も大変だし,それは性別を越えた大変さであると。※しかし,男性の大変さの「しわ寄せ」を引き受けているのは,いろんな意味でやはり「女性」である場合が,いぜんとして多いと思います。「男女」という二項対立ではなく,ジェンダーであれ何であれ「弱者」がしわ寄せを引き受けざるを得ないという構造に対して,草の根的に今後もとりくんでいきたいと思っています。今日は本当にありがとうございました。また,今日の3人のシンポジストの方々のお話の内容の充実さもさることながら,来場者の興心の多様さと高さに,それと,司会の方の落ち着いた進行に,近藤さんのお話には何度も泣きそうになりました。阪本さんはファンになりました。山本さんは,早速著書を読みたいと思います。(その他福祉関係者)

      ★障害者と犯罪者は,誰でもなる可能性があります。しかし,多くの人は,それが,全然わかっていないように見えます。今の日本は,障害者,犯罪者になったら人生は終わりです。職場,地域,社会から排除された上,下等な人間,危険な人間として蔑視され生活をおびやかされながら,元受刑者,障害者の人は,生きているというのが現状でははいでしょうか。仕事と衣食住,等の生活手段を保障する事が累犯者を減らす事になるのではないでしょうか。被害者支援ということがマスコミなどで,さかんに主張されていますが,罪を反省し,更生しようとする,元・加害者の人にたいしても,支援が必要ではないでしょうか。私自身も障害者(難聴者)です。(障害者福祉関係者・難聴障害者)

      ★「人は変わることができる。」というメッセージを強く受けました。変わることができるのは,その人自身の力でのみで,他の人が変えることはできないのだと思います。けれど,本人の力のみで,その人の生活までを抱えられないとしたら,周囲の人が,関わることも必要であるし,関わらない人も変わる必要があるのではないかと思います。人に誉められたことのない人と接することが多くあります。笑顔の無かった人が,笑顔を見せるようになったとき,私はその人から大きな快感をもらいます。ただ自分の無力さを感じることの方がずい分多いですが,この仕事やめられませんね。でも,人に関わることによって,自分自身の問題と向き合うことを避けている気がすることも,しばしばです。
      (障害者福祉関係者・P.S.W)

      ★“自分の失敗を笑えるようになった時に回復を感じる”と言われた近藤さんの話に深いものを感じました。(当事者の家族)
      ★薬物にはとりあえず関係ないが犯罪者になってしまった知的障害者を,だれが,どこで,どのように,サポートできるか?特に「自分は知的障害者ではない」と考える人たちや生活力(一定の社会のおよぎ方を身につけた者)のある人は「支援なんかいらん」と考えていることが多いのでなやむところです。特に家族のサポートのうすい人,もっというと悪い人間関係にこじれている人が更生につながるしくみが必要だと思っています。
      (知的障害者の学校・高等部)

      * 矯正・更生保護官署職員からも大きな反響!!

      シンポジストから「矯正福祉」への提言がなされたことに対して,参加者の約1割を占めた矯正施設職員,更生保護官署職員,保護司からも前向きな意見が寄せられた。

      ★テーマについて,実情を知り,大変勉強になった一方で,弱い人は神様から沢山支援を受けられるのだという近藤さんの言葉や,回復するということについて改めて考えさせられ,テーマに限らない社会全体へかえって視点が広がったように感じます。
      (更生保護官署職員)

      ★・講演者は,3人ともわかりやすい説明で良かった。
      ・満期出所者の受け皿の必要性を痛感した。(累犯障害者,累犯薬物依存者ともに)
      (更生保護官署職員)

      ★保護司をしていて,何の支援もできない満期出所者のことが一番気になっていたし,何か支援する手段はないかと悩んでいたが今日のお話を聴いて満期出所者への何等かの支援の必要性を痛感した。阪本さんの話を聴いて対象者との面談に活かせる部分が多くあった。
      (保護司)

      ★非常に興味深い内容だったと思います。高齢化,福祉施設化が進むといわれる矯正施設ですが,本来の目的とは違う訳で不十分な状態です。「矯正福祉」というものが必要と思います。セーフティネットからこぼれた人達をどのようにフォローしていくかも社会全体で考えていかなければならない問題と感じました。
      (矯正施設関係者)

      ★近藤さんはじめ皆さんの話から,すばらしい提言を感じました。私たちができることは積極的にしたい。面会に訪れる家族へのアプローチを,まずはじめようと思います。
      (矯正施設関係者)

      ★受刑者の中に障害者が多いことは,知ってはいたが普通の仕事では,出会うことが少ない。それには理由があるということが分かった。
      (更生保護官署職員)

      ★今回のセミナーで矯正に福祉の介入が必要だと考えている人がいるということが分かり,矯正施設で勤務している者として心強く思いました。矯正福祉が必要だという声が大きくなり,実現されることを願っています。
      (矯正施設関係者)

      ★とても率直なお話を聞けて参考になりました。日々矯正の中で同じ思いを抱えながら受刑者と接していて,その問題意識をこのセミナーの中で共有できただけでも,とても心が軽くなりました。この問題は簡単な解決方法があるわけではないのですが身近に接する自分達の意識をかえ,やれるべきことをコツコツと始めていくことが大切なのかなと感じました。
      (矯正施設関係者)

      ★塀の中の当事者が,どう考えているのか,現場の状況が認知できてないのに,最終的に厚生労働省,法務省にプログラムをまかせるのは机上の考えではないか。でも,ダルクの話,近藤さんの話には興味を考じた。塀の中の現場としてはなせる本当はいいのだろうか。難しい。
      (矯正施設関係者)

      ★日頃勤務をしていて感じている矛盾を整理することができました。自分自身もっと勉強が必要だと実感しました。幅広い視野を持って日々勤務していきたいと思います。
      行政・保護・福祉がうまくつながっていければ・・・と思います。
      社会復帰が困難なことは目の当たりにしているので。
      (矯正施設関係者)

      ★「保護司」をボランティアでやっているので,本日の山本氏,近藤氏のお話での満期で出所する薬物依存者,障害者,高齢者(引受人がいないので満期)の話が印象的である。本来の更生保護施設=生活保護費を充当しながらの満期出所者の生活の場。が欲しい!!
      (保護司)

      ※ 今我々がなすべきこととはなにか

      累犯障害者や累犯薬物依存者は,今我々がこうして議論しているその時も,刑務所で,あるいは社会で,支援の手を必要としている。特別な処遇メニューや処遇ユニットの新設も無論必要であるが,彼らに関わる援助専門職1人1人が,福祉的な視点を持ってアセスメントを行い,ニーズを確実に拾い上げ,必要な支援に確実にリンゲージ(連結)していくという意識の向上こそが必要であると,今回の司会を行って強く実感した。そして,累犯障害者や累犯薬物依存者と呼ばれる人々を社会から排除するのではなく,共に社会のなかで支えあって生きていくことを,市民1人1人が意識していかねばならないであろう。

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