サンフランシスコ・ツアーに参加して公開済み: 2014年11月17日更新: 2015年6月18日龍谷大学 法学部 4年生 丸山 泰弘 ― はじめに ― 薬物依存の回復プログラムに関して一番いい方法とはなんだろう?その問の答えを考えることから私たちの薬物問題に関する活動が始まりました。みんながそれぞれ医療的側面から考えたり、司法的側面から考えたりと様々な案が出されたのですが、私が注目したのがドラッグコート(以下DC)という制度でした。日本ではあまり文献がなく、まだまだ一部の学者だけで日本の法律家が注目しているとは言い難い状況で資料集めには困っていました。そんな中、まだまだ未完成のままアメリカのDCに関する発表をさせてもらった時に、アパリの尾田先生に「1つや2つの文献を読んだだけでは、その制度を理解するなんて不可能だよ」と指摘を受けました。このときに、「それなら絶対に本物を見てきてやる!」といった感情にかられたのがこのツアーに参加する動機でした。(この話を後日、尾田先生に直接お話したところ笑っておられた)DRUG COURT(成人版) 昔はアメリカも日本と同じように厳罰主義をとっておりDrugは意志の弱い人、落ちこぼれが使うものであると考えられていました。しかし、今のアメリカでは薬物依存は病気であるとする考え方が主流になっています。レクチャーしてくださった精神科医のパブロ氏は「高血圧などと同じで病気であると考え、薬物依存はその人のせいでなるのではない。まずは、売る人と使う人を区別することが重要で、法的に罰するのであれば使用者ではなく売人ではないだろうか」とおっしゃられました。この考え方がDCを実施するにあたって大きな影響をあたえているようです。続きを見る 3月17日(月)サンフランシスコ市のDCに訪れました。DCは日本にある制度ではないので、ここではすべてにおいて説明するのは不可能ですが2点だけ私が興味を持ったポイントについてお話したいと思います。 1点目は、DCに行きそのトリートメントを卒業できれば薬物使用に関する他の犯罪は問われないという点です。もちろんすべての犯罪が問われないのではなく暴力事件以外で刑期が1年未満の軽犯罪についてのみ問われないのです。具体例をあげると薬ほしさに窃盗をしても窃盗事件には問われないといったことです。これはDCか普通の裁判にかけられ刑務所に行くかの選択時において大きな影響をあたえると思われます。 2点目は、裁判官といえど一人で答えを出さないというところです。普通の裁判のように弁護士VS検察官というような図式にはならず、裁判官・検察官・弁護士・ケースマネージャー・カウンセラー・保護観察官が共通のゴールを持ち、クライアントの回復には一番何がいいのかをみんなで話し合います。クライアントと直接話をしたりもします。このように皆で「一人一人のクライアントが回復できるにはどうしたらいいのだろうか?」という同じ目標にむかって仕事をしているのでチームに団結力があり、裁判中には検察官と弁護士が同じ机に並んで座るほどです。みんなで考えるという例をあげると、弁護士が「このクライアントは刑務所に行った方がいいのでは?」と意見し「いや。もう少し違う施設に入れてみてからでも遅くはないだろう」とカウンセラーが反論する場面がありました。日本ではもちろん普通の裁判でもあり得ない状況です。しかし、みんながみんなクライアントの回復という同じゴールを目指しているからこそ起こる場面なのです。YOUTH TREATMENT & EDUCATION COURT(少年版) 3月18日(火)少年用DCに訪れました。ここを訪れるまでは「自分ではどうしようもなくなり治りたいと、せつに感じて治療に専念するから効力が発揮されるのであって、やらされているといった感覚では回復なんてないのでは?」といった疑問を持っていました。そのため成人用のDCでは、社会経験として追い詰められた人たちが本気で回復したいと願うからこそ効力があり、少年たちがそこまで本気で回復したいと考えているとは思えないので少年用のDCに意味があるのだろうかと疑問があったのです。しかし、少年だからこそ今のうちだからこそ治療が効力を発揮するというのが現状でした。どういうことかと言うと、少年の段階では成人の社会問題のように複雑化しておらず、家族問題なら家族問題、学校での問題なら学校での問題と薬物使用にいたる問題の原因が明確であり早い段階で対処がしやすいといったことです。さらには成人で薬物を使用している人のほとんどが少年期のうちから薬物をしようしており、それがやめられずに…といったケースが多いので少年のこの時期にその問題を解決し、今後その誘惑に負けないようにサポートするといったことが少年用DCの目的でした。さいごに パブロ先生は「来日した時に、日本の心理学者と話をする機会があり“薬物依存はどうしたら治ると思う?”と質問したら“警察に通報すればいい”と返答されたことがある。日本はまず薬物に関する観念というか視点から違いを直す必要があるね」と言われました。まさにその通りで日本ではまだまだ薬物に対する考え方が病気として見るのではなく、犯罪として見る方が主流であると思います。今回のツアーでたくさんのレジデンシャルを見学させてもらえとても感動しています。しかし、日本でこれらを創設しようとすると考え方の違いから地域住民の反対など問題は山ほどあると思います。しかし、悲観的にならず少しずつでも実現に向けて動き出さなくてはならないと感じました。 DCは司法だけではなく、医療・自助グループ様々な方面からのつながりがとても重要だと思います。カウンセラーとして、心理学者として、レジデンシャルにおいてインターンをしている人、色々な場面で活躍している日本人がいました。しかし、今回はたまたまだったのかもしれませんが法的な分野では日本人の影さえ見れませんでした。日本の法律家たちももっとDCの可能性に注目すべきだと思います。 今回、私たちはサンフランシスコのDCを見学しました。アメリカは州ごとにその制度が変わっており、これから述べることはサンフランシスコのDCについてのことでありアメリカのDCがすべてそういった方法をとっているのではないので、その点だけはご了承ください。共有:TwitterFacebook ご注意ください この話は本人の了承を得て匿名または実名で掲載しておりますが、記事の内容に関するご質問などは回答をいたしかねます。 このコンテンツの著作権はFreedom・大阪ダルクに帰属し、一切の転用・転載を禁止いたします。こちら記事もどうぞ 薬物依存と「不適切な養育」 青年が覚せい剤の自己使用で逮捕されたという連絡があった。 半年後、遠方の警察から「面会・・・ 法務省、法制審議会 法務省、法制審議会 法務省・法制審議会において「被収容人員適正化方策に関する部会」が0・・・ 街医者になりました! (1)大阪ダルクの誕生の頃 3月31日、大阪府を止めました。大阪府を止めるとなると、思い・・・