薬物依存症回復支援 — 薬物依存症は回復できる病です

サンフランシスコツアー報告 ’06


二月十一日から十九日まで、第五回サンフランシスコ・スタディ・ツアーが開催されました。今回のツアーは福井県立大の西川京子先生を団長に、日ごろはソーシャルワーカーとして働く援助職が参加者の大半をしめるツアーとなりました。
今号では、正式な報告レポートというよりも、今回のツアーでのトピックを中心に報告させていただきます。

定着したプロポジョン36

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「プロポジション」というのは州民に対してなされた「提案」という意味ですが、2000年にカリフォルニア州の州民投票によって、「処罰よりも治療を優先する」というプロポジション36(以下プロップ36)が有権者の賛成を得たため、「物質乱用と犯罪の予防法」the Substance Abuse and Crime Prevention Act (SACPA)が立法化され施行されています。この法律により暴力の伴わないアルコール・薬物絡みの軽犯罪で有罪となった成人は、トリートメントのない保護観察や矯正施設への収容のかわりに保護観察下でトリートメントを受けることができるようになりました。カリフォルニア州全体ではアルコール・薬物関連で、一年間におよそ5万人の逮捕者があり、このうち約3万7千人がこの法律により治療に導入されています。ドラッグコートとの違いは、何でしょうか。ドラッグコートでは判事・弁護士・保護観察官・ソーシャルワーカーやセラピストなどのコートのチームが常にかかわり、月に数回、本人がコートに出廷し治療に取り組んでいる様子などを判事に報告しなければなりませんが、プロップ36では、コートの関与はもっと少なくコートのチェックは年に数回あるだけのようです。司法による「強制力」でトリートメントの場に長く引き止める、というドラッグコートの考え方をより広く実行するためには、コートのかかわりを少なくするのは仕方のないことなのかも知れません。

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    • ドラッグコートとプロップ36の関係は郡によって、さまざまなようですが、サンフランシスコでは初回の逮捕ではプロプ36が適用されています。またマリワナの使用では、何回目の逮捕でもプロプ36だそうです。一方、深刻な精神疾患と依存症を合併する「デュアル・ダイアグノーシス」の場合はドラッグコートで処遇されるとのことです。
      プロプ36は軌道に乗り、成果を挙げているとして、サンフランシスコの専門家たちには受け入れられているようでした。しかし一方で、「警察が逮捕するのはラテン系などのカラードがほとんど。そのためプロプ36の利用者が偏っている」という人種差別を指摘する声もありました。

      ハームリダクション

      今回のツアーでよく耳にしたのが「ハームリダクション」です。「ハームリダクション」といえば、注射器によるエイズなどの感染を防ぐために清潔な注射器を配布する、などの取り組みが思い浮かびますが、もう少し広い概念として使われているようです。AARSという団体のセラピストは次のように語りました。「ハームリダクションはアルコールや薬物を使ってもいい、という考え方ではありません。むしろ使っている間から、何ができるのかを考えるのがハームリダクションです。そして最終的には断酒・断薬に結び付けていくのです。」
      特に精神疾患を合併しているデュアル・ダイアグノーシスが増加する今日、従来の「直面化」や「底付き」を重視するアディクション・アプローチでは、ほとんどの人を治療から排除する結果になってしまうため、「ハームリダクション」の考え方が採用されるようになってきたといいます。こうした背景の中で「動機付け面接法」などの工夫もおこなわれているようです。ホンマ・レイコ先生も「クリーン&ソーバーを第一の課題にすると七割くらいの人が落ちこぼれてしまう。そのためサンフランシスコはハームリダクションの考え方に転換したが、これとてまだ手探りの状態である」と話されていました。

      スピリチュアリティ

      今回のツアーではスピリチュアリティも参加者の問題意識に上げられていましたが、実際にはなかなか難しいテーマで、ツアーのプログラムでも取り上げきれませんでした。しかし依存症からの回復にあたって、とても重要なテーマであるにちがいありません。
      ツアーでは「全米で一番危険」といわれている地域を訪ね、そこで行われているDVの問題を持つ男性のミーティングに参加しました。ほとんどの参加者が黒人で、薬物と暴力の連鎖の人生の結果、裁判所の命令でプログラムに参加している人たちでした。このプログラムを運営しているのはキリスト教会でしたが、黒人のコミュニティでは「宗教をベースにしないとプログラムが成立しない」と語られていたのが印象に残りました。貧困の中で三人に一人が刑務所に行く、という地域で「スピリチュアリティ」という言葉が解き明かせないまま、宿題として持ち帰ったツアーでもありました。

      ネットワークの広がりと深まり

      今回のツアーは通算で五回目になり、サンフランシスコの人たちとのネットワークは広がりと深まりを見せています。今春にはパブロ・スチュワート先生が来日、京都と広島で講演を引き受けてくださいました。夏にはAARS(アジアン・アメリカン・リハビリテーション・サービス)から関係者が来日の予定。さらに来春にはAPA(アメリカン・サイコロジカル・アソシエーション)のナンシー・ピョトロフスキー先生が訪日の予定です。

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