薬物依存症回復支援 — 薬物依存症は回復できる病です

保安処分とドラッグコート


fp30

「重大な犯罪行為をしながら刑事責任能力がない」精神障害者に対する政府の処遇案が明らかにされました。「再犯のおそれ」があるとされた場合には入院期間に上限を設けず「治療施設」への入院を命令する、また通院治療命令の場合には保護観察所が経過観察を行うなどが主な内容です。私は「保安処分」とも言うべきこの政府案に対して強い危惧と憤りを感じずにはいられません。

精神障害者が犯罪行為に至るまでに追い詰められてしまう背景には、次のようなことがあると考えられます。①精神医療の治療体制の劣悪さ、特に精神病院については、医師は一般病院の三分の一、看護士は三分の二の配置でよいとする「精神科特例」による恒常的な人手不足。②緊急時に安心して利用できる精神科救急の未整備。③保健所の精神保健福祉相談員の人員不足をはじめとする地域でのマンパワーの不足。④今なお根強い差別と偏見。

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    • 一頃に比べて作業所や生活支援センターが地域で活躍しているものの精神医療・福祉の「貧困」を根本から変えるには至っていないのが現実ですし、それを放置し隔離と監視の体制を強めることは許されないことであると思います。私は政府案が実現に移されれば、薬物依存者もまたその影響から無縁ではいられないとも思います。大阪ダルク支援センターの会員・支持者のみなさん、共にこの問題を喫緊の課題として受け止め、私たちにできることは何かを考え、行動する必要があるのではないでしょうか。

      ところである友人から「ドラッグコートと政府案(保安処分)とはどうちがうのか、どちらも刑事処罰よりも治療を、という立場ではないか」と問題提起がありました。一九九八年にサンフランシスコのドラッグコートを訪れ、それ以来「薬物依存者に処罰よりも治療を」と主張してきた者の一人として、この問いかけには真摯に答える責任があると感じています。

      ドラッグコートは本人の意思により利用するプログラム

      保安処分とドラッグコートの違いは、まず一つにはドラッグコートの利用が本人の意思によって決められることです。薬物の自己使用や所持、薬物のための詐欺や窃盗などで起訴された薬物依存者は、通常の刑事裁判の後に受刑するか、通常の裁判を受けずにドラッグコートを利用するかを選択することができます。またいったんドラッグコートの下でトリートメントを受けたとしても本人の意思で通常の刑事手続きに戻ることもできます。一方、保安処分は本人の意思ではなく、医師や法律家によって「治療」という名の隔離・収容が決められるのです。

      ドラッグコートはダイバージョン

      ドラッグコートのベースとなる考え方は「薬物依存は犯罪ではなく病気である」というものです。そもそも薬物の自己使用や所持がなぜ犯罪なのでしょうか。覚せい剤やシンナーなどの使用は自傷行為にすぎず、直接他人に害を与える行為ではありません。それゆえ薬物犯罪は「被害者なき犯罪」と呼ばれるのです。薬物乱用が法で取り締まられるのは、刑罰の威嚇によって薬物が社会に蔓延するのを防ぐという社会防衛にその根拠を持っているのです。ですから薬物依存者は、本来依存症という病を持つ病者として処遇されねばならないにもかかわらず社会防衛のために「犯罪者」として扱われていると言い換えてもよいかと思います。このような倒錯した状況の下で、ドラッグコートは外形的には薬物依存を「犯罪」として司法の領域に置きながら、実際には医療と福祉の資源で対処する試みなのです。私は、将来、薬物の自己使用や所持は犯罪ではなくなる日が来るのではないか、と考えています。それはかって自殺が犯罪(デュルケム「自殺論」)であったように過去のものとなるでしょう。ドラッグコートはそれに到る過渡的なステップではないでしょうか。

      「犯罪」を「治療」の名の下に真実を隠蔽し「病者」を社会から隔離する保安処分と長らく「犯罪」としてのみ遇されてきた「薬物依存者」を「病者」として認めるドラッグコートは正反対のベクトルを持つものであり、前者に欠落しているのは正義であると思います。

      この原稿の内容は本ニュースレターの編集責任者である谷口の個人的な見解であり、大阪ダルク支援センターの理事会等の議論を経たものではありません。今後の議論の深化と事態の緊急性を鑑み掲載したものであることをお断りしておきます。

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