薬物依存症回復支援 — 薬物依存症は回復できる病です

青少年と薬物治療 in America


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今回は、アメリカでの青少年の薬物治療について紹介する。いくつもの研究結果では、依存症を経験した両親を持つ子供は、環境的、生物学または、遺伝子学的にも、依存症なりやすいということが、報告されている。誤解のないように、断っておきたいが、これはあくまでも、依存症を経験した人の多くの片親または、両親が依存症を経験しているという、相関関係(Correlation)であって、依存症の親を持つ子供が依存症を発症するという、因果関係を証明したものではない。同じ要領の相関関係が家庭内暴力の研究でも報告されている。家庭内暴力の、加害者本人も、幼少時に家庭内暴力を受けている場合が多いというのである。少し本旨とは外れるが、アルコール、薬物そして、暴力の相関関係も同じく証明されているため、簡単に触れておいた。

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    • アメリカの“薬物依存症とメンタルヘルスサービス機関“(The Substance Abuse and Mental Health Services Administration)が行った、全米家庭の薬物使用調査の結果によると、1997年には、12歳から17歳の薬物使用率は、11.4%に増加し、12歳から13歳の違法薬物の使用は、前年度の2.2%に比べ、1.7%増の、3.8%となっている。1997年以降も、青少年の薬物使用に対する危険意識が年々下がる一方、薬物が日々着々と青少年の身近な存在として君臨しつつある、または、その地位が確立されている状況は、アメリカの連邦政府、各州、郡にとって、大変大きな問題であることは、いうまでもなかろう。
      そんな状況のなか、青少年専用の治療施設の存在は、不可欠である。施設の設立に伴って、青少年専用プログラムの研究、発達が進んだのも事実だ。ここで青少年の薬物治療を提供していく上での、5つの重要ポイントを、紹介したい。参考にした文献は、トリートメント インプルーブメント プロトコール シリーズ32:青少年の薬物疾患治療(TIP Series 32:Treatment of Adolescents With Substance Use Disorders) である。

      1. 青少年の青年期という心身の発達過程を考慮に入れることはもちろんのこと、個々の、性別、民族、身体障害、モチベーション(Stage of readiness to change)、そして、カルチャーバックグラウンド。
      2. 青少年の認識的、社会的、または、感情的発達の遅延は、彼らの薬物使用にしばしば関係づけられている。それらの遅延を見極め、彼らの学習能力、自尊心、人間関係にどのように影響しているのかを解明していくことは、薬物治療を進めていく上で大切な要素である。
      3. 根本的な原因が、家族関係にある場合、そして、家族という小さな社会が持つ、青少年の生活環境を変えていける力から、青少年の薬物治療において、彼らの両親、家族が治療計画、プログラムに、一緒になって参加していくことは、きわめて重大な要素である。
      4. 地域により、青少年専門の治療プログラムが身近に存在しない、利用不可能な状況は、残念ながらまだまだ現実である。青少年が成人専用に組まれたプログラムで治療を進めるより他ならない場合、極力の慎重性と、青少年独特の二ーズを満たすプログラム調整とその柔軟性が要求される。
      5. 沢山の青少年は、要求されて強制的に治療にいく。しかしながら、強引な治療へのプレッシャーは、一般的に青少年の行動パターンを変えていくプロセスに継続的に作用するとは、言えない。治療プログラムスタッフ、クリニシャンは、初めてのインターベンションから、青少年の変わろうとする意欲に対して、または、それを育てるプロセスのサポートに、敏感でなければならない。

      以上1~5は、あくまでもアメリカでアルコール、薬物治療にあたるクリニシャン対象に提供された文献であり、当然のごとく、アメリカの社会状況、文化、問題を考慮し作成されたものである。それゆえに、“いくつかのアメリカならでは“という点を、著者なりに、日本の社会に、当てはめてみた。

      青年期の精神的、身体的発達は、第二成長期とも言われるように、非常に活発な変化が短期間で起こりうる。それに加え、“ピアプレッシャー“(Peer Pressure)など、周りの環境に、非常に敏感になる時期でもある。こういった理由から、心身共にだれもが不安定になりえる時期である。当然そういったことも考慮に入れ、次のような要素がどのように、青少年の薬物問題に関わっているのかを彼らと一緒に考えていくことも、必要ではなかろうか?

      • ”ジェンダーロール”:社会の中で、性別が意味すること、または、それよって課される役割。例えば、“男なら、リスキーなことをするほうが、かっこいい、””女なら、やせているほうがかわいいので、お酒は飲まないが、薬は、使う“など。
      • 民族:日本では、あまり民族の違いによる、生活感覚や、家族文化の違いは、見られないかもしれないが、例えば、部落差別、在日韓国人、在日中国人、経済的上流階級、経済的下流階級など、いわゆる“一般的日本人(経済的中流階級)”に、あてはまらない人々の受ける、社会的プレシャーは、「単一人種国家」日本であるからこそ、クリニシャンが意識的に、クライアントと一緒に、向かい合っていかなければならない要素ではなかろうか? 特に多感な青年期にある青少年の場合、そういった自分のコントロールを超える域の”自分の一部“をどのように、うけとめていくか、または、うまく付き合っていくかという課題は、時に、個人や家族だけの力で乗り越えていくハードルとしては、高すぎるのかもしれない。
      • 身体、学習障害:上に記したように、排他的な日本文化のなかで、他の人と違うといことは、社会の風当たりの強い立場にあるといっても、過言ではないのではなかろうか? こういった、社会の仕組み、文化、風習などを、考慮に入れてクライアントの立場から、”治療“という意味を考えていくことも、大切ではなかろうかと思う。

      少しでも、日本で薬物治療に関わるクリニシャンの方の参考になれば幸いである。

      プロフィール
      岡 真弓 (おか まゆみ)
      カウンセラー。 1976年、岡山県生まれ。ポートランド州立大学心理学部卒。2000年より Christie School(精神、行動欠陥の子供たちのためのレジデンシャルトリートメントセンター)勤務。2002年より、ポートランド州立大学院 教育学部 カウンセリング科所属。2003年より、YWCA カウンセリングセンター勤務。連絡先 mayumioka@gmail.com

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